アボルブとは
アボルブとはデュタステリドを主成分とする薬剤で、本来の用途は前立腺肥大症に対する治療薬でした。カプセル状になっており、アボルブカプセル0.5mgとして流通しています。前立腺肥大を招くジヒドロテストステロン（DHT）と呼ばれる悪性の男性ホルモン生成を阻害することで、肥大化を防ぐという仕組みです。このDHTはAGA（男性型脱毛症）治療にも密接な関わりがあります。
アボルブを服用した前立腺肥大症の患者に、高い割合で発毛作用などAGAに対する改善効果が認められたため、主に海外においてAGA治療薬として活用されてきました。副作用の１つとして時折話題になる子作りへの影響ですが、成分の精液への移行や母胎への影響はほぼないという試験結果が出ていますし、添付文書内の禁忌欄にも「子作り中の男性」という記載はありません。しかし、精液への移行量はゼロではありませんので、どうしても気になるという方は、子作りの１２～２０週間前から服用を中止すれば薬剤の影響を完全になくすことができます。今回はこのアボルブ(デュタステリド)について詳しくお話しさせていただきます。
DHTとアボルブの作用
悪性の男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)はAGAの原因の最も多くを占める物質で、良性の男性ホルモンであるテストステロンが５α還元酵素の影響を受け変換されることで生まれます。DHTは男性ホルモンの１種なのですが薄毛作用を持っており、具体的には、DHTが髪の毛の毛乳頭細胞と結合してしまうと、髪の毛の細胞分裂が妨げられ成長が抑制されてしまいます。そのため、AGA治療ではDHTの生成を断つことが重要になるのです。
アボルブ（デュタステリド）は５α還元酵素に作用し、DHTへの変換を防いでくれますので、AGAの原因を元から絶ってくれる薬剤ということになります。また、アボルブの強みとして、同じくAGA治療薬であるプロペシア（フィナステリド）が２種類ある５α還元酵素のうちII型にのみ効果を発揮するのに対し、アボルブはI型とII型の両方に作用します。さらに、II型に対する効果もプロペシアの約１．６倍と非常に高いことがわかっているため、プロペシアで効果が実感できなかったという方がアボルブのようなデュタステリド製剤に切り替えることで、効果が発揮されるというケースも数多く報告されています。
アボルブの副作用と初期脱毛
アボルブは男性ホルモンに作用する薬剤ですので、副作用のいくつかはそれに関連したものになります。症状としては非常に少ない確率ですが、性欲の減退、勃起不全などが含まれます。基本的にはいずれも軽微な症状ですし、継続服用と共に緩和されていく場合もありますので、さほど問題にはなりません。ただし、極めて稀ではありますが、肝機能障害や黄疸といった重篤な副作用が発症することもありますので、その際は速やかに医師にご相談下さい。
アボルブに限らずAGA治療薬を服用することで一時的に脱毛が増加する「初期脱毛」が起きることがありますが、これは副作用ではありません。AGA治療薬が効果を発揮し、髪の毛が太く強いものに生え変わる過程で起きる症状ですので、独断で服用を中断しないで下さい。なお、初期脱毛は必ずしも全ての方に起きるわけではありません。初期脱毛が起きないからといって、薬剤が効いていないことにはなりませんので、根気よく服用を継続していって下さい。
アボルブの禁忌
重度の肝機能障害をお持ちの方は、アボルブの服用によって肝臓での代謝が遅れ、血中濃度が上昇してしまう可能性があるので服用することができません。また、AGA治療薬としての効果が期待できるのは男性に対してのみとなります。女性に対しては適用がありませんので、服用することはもちろん、薬剤に直接触れることも経皮吸収（皮膚から薬剤の成分が吸収されること）されますのでNGです。アボルブを服用する方は、用法や容量だけでなく保管方法にもご注意頂き、パートナーや女性のご家族が薬剤に触れることのないようにして下さい。
ザガーロとアボルブの違い
アボルブと同じくデュタステリドを主成分としているAGA治療薬にザガーロがありますが、両薬剤は有効成分や期待できる効果の他、発症するおそれのある副作用まで同じです。では両薬剤の違いはどこにあるのかと言うと、保険適用の違いとなります。既に説明した通り、アボルブは元々前立腺肥大症の治療薬として承認を受けていましたが、副産物としてAGA治療薬としての効果が明らかになったため、適用外のAGA治療薬として使用されることがありました。そこで、正式にAGA治療薬としての承認を受け、名前を変えて登場したのがザガーロという訳です。AGA治療薬として承認されているのはザガーロの方なのですが、効果の面では両薬剤に差はありません。このことは、ザガーロの登場まではアボルブがAGA治療薬として活用されており、多くの実績を上げていることからも明らかと言えるでしょう。
