コラム

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2022.03.09

抗リン脂質抗体症候群の紫斑性潰瘍に対するバイアグラの有効例

抗リン脂質抗体症候群とは

抗リン脂質抗体症候群とはその名の通りリン脂質に対する抗体による疾患の総称で、具体的には血栓症や習慣性流産を引き起こすことで知られています。主に膠原病であるSLE(全身性エリトマトーデスに合併することでも知られています。 血栓症のため習慣性流産以外にも網状紫斑や皮膚潰瘍等といった皮膚症状も知られています。

抗リン脂質抗体症候群の紫斑性潰瘍にバイアグラが有効であった一例

今回は網状紫斑と足先の皮膚潰瘍にバイアグラ(シルデナフィル)が有効であった一例です。

SLEに罹患し2年のアフリカ系アメリカ人女性でレイノー現象(動脈の血流障害)が時々見られていました。受診2週間前に新しく買った靴を履いたところ痛みとレイノー現象を発症し足指先が黒ずんできました。受診当初は以前から飲んでいた血管拡張剤のニフェジピン30mg/日を60mgに増量し、免疫を抑制するステロイドのプレドニン5mgと免疫抑制剤1500mg×2回/日は継続として治療されていました。しかし痛みの悪化と足指の壊死進行し増悪したため入院加療となりました。

入院時の皮膚症状は左足趾1-2に網状紫斑を認め、第1指は内出血し第2指は爪がはがれ壊死化していました。病理組織上は動脈が血栓化し、フィブリンの析出や炎症の波及はありませんでした。血液検査では抗リン脂質抗体症候群に特徴的な抗体である抗カルジオリピンIgG抗体を認めていました。それ以外の凝固系の異常は認めず、そのため抗リン脂質抗体症候群による血栓性皮膚潰瘍と診断されていました。

入院後の治療は抗凝固薬のヘパリン、免疫抑制剤のプレドニンによるパルス療法(大量療法)にニトログリセリン(血管拡張薬)塗布とニフェジピン120mg増量による血管拡張を行っていますが症状は進行していました。皮膚壊死に関しては抗凝固薬で更なる血栓を防ぎ、ステロイド、血漿交換、γグロブリン投与で炎症の沈静化を図っていますが改善は乏しかったようです。そこで第3病日からニフェジピンの代わりにバイアグラ20mgを1日3回投与に変更したところ疼痛が軽減し48時間後に網状紫斑が消失しました。14週に渡り治療を継続し、潰瘍も改善傾向を示し一部組織を失いましたが軽快しています。

考察

血栓性皮膚潰瘍へのバイアグラの作用は以下の通りと考えられます。

ご存知の通りバイアグラはPDE5阻害剤です。PDE5は血管平滑筋や血小板にも存在しており、cGMPを分解し2次的に一酸化窒素による血管を拡張させ、さらに血小板凝集を促します。バイアグラによりそれをブロックすることでcGMPを増やし、カルシウム濃度を低下させ血管拡張を促します。また血小板内のcGMPが増えるとトロンビンによるカルシウム放出が抑えられ血小板の活性が抑さえられます。以上より血管拡張と血小板による血管閉塞が抑制され症状が改善したと考えられます。

このことからバイアグラは血管拡張作用と血小板凝集抑制作用があり、抗リン脂質抗体症候群の血栓形成による網状紫斑や皮膚潰瘍に効果があることが分かりました。またこれは同様の機序の他の血栓性疾患に対しても有効的である可能性が考えられます。例えば慢性動脈性硬化症(PDA)、深部静脈血栓症(DVT)などにも有効である可能性があり、バイアグラの投与が末梢循環不全の治療に効果的であるかもしれません。

バイアグラは開発途中にED改善作用がわかり、ED治療薬として世界で初めての適応をとりました。ただ元々狭心症や心不全など心血管系の薬剤として開発が勧められていたため、作用発現の機序からも上記のような効果が認められる可能性は高いと思われます。

ED治療薬はクリニックや病院で処方を

バイアグラなどのED(勃起不全)治療薬が発売された当初はとても危険な薬というイメージが強く、いまだにそのイメージを持たれている患者さんもいらっしゃいます。しかし近年の研究で、ED治療薬は血管機能全般の機能改善効果などが知られ、アンチエイジングの薬ともいわれるようになりました。ED改善効果だけではなく、心不全の治療薬として、その他血管系の治療薬として期待されています。実際にバイアグラの成分である「シルデナフィル」は肺動脈高血圧症の治療薬として認可され、シアリスの成分である「タダラフィル」は肺動脈高血圧症、前立腺肥大症で認可されており活躍の場を広げています。

しかし、上記の論文のように安全性、有用性は知られてきましたがやはりそこは薬剤です。用法・用量や副作用など、また自身にあった薬剤の選択など安易に自己判断されることは危険です。

ユナイテッドクリニックではED治療薬の処方について医療機関を受診することをお勧めします。当院では問診票ご記入後、医師の診察で適正な薬剤を選択し、素早く院内処方いたします。

なお、現在でも抗リン脂質抗体症候群の血栓メカニズムは完全には解明されていませんが、現在支持されている説は以下の通りです。

リン脂質に対する自己抗体が血小板を凝集させ、さらに血小板と血管内皮細胞を活性化させて凝固前段階状態(血管内物質が固まる寸前状態)を作り出しているとの説です。このプロセスを加速させるのが動脈硬化による血管損傷や、感染症、外傷、ギブス固定(今回の靴はこれに当たると考えられる)です。またレイノー現象の血管攣縮や靴ずれが血栓をさらに増悪させたと考えられます。

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